転職時によく言われる「自己分析」と「ITキャリアプラン作成」ですが、上流工程を目指すときの注意点があります。
それは自身が思う自分と、人から見た評価は通常違うということです。
特にプログラマーから上流工程SEに転職した人に多いのですが、コミュニケーションは苦手と思っていた人が、顧客からコミュニケーション上手と言われることがあります。
自分自身のことを正しく理解できなければ、自身に合わないキャリアプランを立ててしまい苦しむこととなります。
上流工程を目指すときの自己分析の仕方と、ITキャリアプランの立て方をお伝えしていきます。
自己分析
強みと弱み
自己分析では、自身のこれまでの振り返り、経歴まとめ、性格や強みと弱みの洗い出しなどを行います。
ポイントは人からどう評価されているか、正しく理解することです。
私が以前いた会社で、「人とのコミュニケーションが苦手」と思っていたプログラマーが上流工程SEに転職後、顧客からコミュニケーションが優れていると言われたことがありました。それも1社ではなく、関わる会社全てから評価されたのです。
実際に話してみると、たしかにその人はか細い声で話し、言葉もたどたどしい感じでした。しかし上流工程SEとして要件定義をすると、(自身から話すのが苦手なため)人の話を熱心に聞くようになり、ユーザからすると要望を伝えやすく会話もしやすいと評判になったのです。
その人は「流暢に話せない自分はコミュニケーションが苦手」と思っていました。しかし顧客は「しっかり話を聞いてくれるコミュニケーション上手」と捉えていたのです。
物事は見る視点により変わります。彼は顧客評価が高くプロジェクトも数々成功したことで、今は年収800万円のマネージャに昇進し活躍しています。
もし自己分析を誤り、コミュニケーションが苦手なため上流工程は無理、と結論づけていたらどうなっていたでしょうか。その人は今もプログラマーとして一人黙々と作業していたかもしれません。
人からどう評価されるか把握する方法ですが、家族や友人に聞いてもあまり意味はありません。
どう見られているか感じるには良いと思いますが、重要なことは仕事や転職の精通者に評価してもらうことです。
会社で尊敬する先輩、転職して活躍している元同僚、もしくは転職エージェント担当者がお勧めです。
特に、あなたの強みと弱みを客観的に意見してもらってください。自身が思う自己評価と、人が思う評価が異なることに驚くはずです。
経歴
自己分析では今までの仕事内容(経歴)を振り返ります。
履歴書では、いつどの会社に所属していたかなど時系列でまとめますが、ここではできるだけ細かく洗い出します。メモでもExcelでもいいので書いておくと自身の整理に役立ちます。
関わったプロジェクト(システム導入保守)ごとに、最低限、以下の基本情報を押さえます。
- 関わったシステムの内容(Web、通販、会計、人事など)
- 関わった期間
- 担当した工程(詳細設計、単体テストなど)
- プロジェクトに関わった人数、および自身の立ち位置(1プログラマーなど)
- プログラム言語や環境(Java、PHP、Oracleなど)
また上流工程を目指すためには、上記の基本情報以外に押さえるべきことがあります。
- 後輩などへの指示・教育・管理などの経験有無
- 後輩などへ働きかけしたこと(後輩のスケジュール管理、OJTによる教育など)
- 納期・品質・コスト遵守のために心がけていること(深夜残業してでもスケジュール遅延を起こさないなど)
- 小さなことでもいいので達成した成果(SQL書き換えでパフォーマンスを34.2%改善など)
- 簿記2級など資格勉強していること
なぜ上記のようなことを問うのでしょうか。
上流工程SEでは、プログラマーへの指示や管理が必要となります。後輩や部下への教育も重要な役割です。
納期・品質・コスト(費用)は非常に重要で、上流工程SEの力量が試される要素でもあります。
納期に遅れるということは通常許されません。品質が悪ければ、業務を止める不具合発生を引き起こしてしまうかもしれません。コスト超過すれば会社の利益を圧迫します。
納期・品質・コストを意識し、小さなことでもいいので遵守を心がけ実施していることがあれば、上流工程SEに適性があると評価されやすくなります。
今まで達成したことは、34.2%のようにできるだけ具体的に押さえます。数字などで定量的に表現することは、上流工程SEやITコンサルタントになってからも求められることです。
資格勉強は業務知識を得るために行います。やる気のアピールにもなります。ただ資格勉強していないからといって、転職を待つ必要はありません。転職活動をしながら、今から始めても問題ありません。
上流工程を目指す人は、現在ではなく、将来活躍できると思われるかどうかが大切です。
ITキャリアプラン作成
キャリアプランとは、自身が最終的にどのような仕事をしたいか、その実現のために経歴(キャリア)の計画(プラン)を立てることです。
最終目標とする仕事
まずは最終的になりたい仕事を決めます。最終目標を決めてぶれないようにすることです。
ITに関わる人にとって、最終的に目標とする仕事としては例えば以下があります。
- プログラマー
- システムエンジニア
- 社内SE
- ITコンサルタント
- 自社開発エンジニア
- 独立起業した社長
- フリーランスエンジニア
どのような仕事をしたいか、職種などを知りたい方は以下も参考にしてください。
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上流工程SEやITコンサルタントの仕事のやりがい
要件定義などの上流工程に携わるSEやITコンサルタント、その仕事のやりがいとは何でしょうか。 SIerや社内SE、ITコンサルタン ...
経歴の計画策定(私の実例)
続いて、どのような順序で最終目標に向かうかを決めます。
職種を決めるだけでなく、現実的に達成していけるよう規模なども押さえます。
あまりにも詳細に計画立てせず、転職活動や仕事をしながら徐々に具体的にしていけば問題ありません。
例えば以下は、私が最初の転職活動で立てたキャリアプランです。
PG→中堅企業のSE→ITコンサルタントか社内SEで業務知識も強化→事業会社の経営企画→業務・IT両方をこなすコンサルタント
そして実際に辿ったキャリアは以下となります。
- 年収276万円の下請け会社のPG
- 年収524万円の中堅企業SE
- 年収708万円のベンチャー企業エンジニア
- 年収892万円の大企業社内SE(後に経営企画部に異動)
- 年収1837万円のITコンサルタント
「業務・IT両方をこなすコンサルタント」という最終目標に向け、ITの経験だけでなく、社内SEや経営企画部で業務知識を強化しています。
またコンサルタントは、ハードワークで頭の回転やスピードも求められるため、ベンチャー企業に転職して激務への対応やスピード感を養ってきました。
経歴の計画策定(一般的な例)
ITの仕事として一般的なキャリアプランをいくつか記載します。
これらも参考にしながら、実現したいキャリアプランを作成していただければと思います。
- PG→SE→SIerでプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャ
- PG→SE→ITコンサルタント
- PG→SE→ITコンサルタント→大企業の社内SEか経営企画
- ベンチャー企業の自社開発エンジニア→独立起業
- PG→SE→中堅企業の社内SE→大企業の社内SE
- PG→SE→上流工程に関わるフリーランスエンジニア
再情報収集
自己分析とキャリアプラン作成ができたところで、以前実施した情報収集を再度行います。
まず動き出す→情報収集→自己分析→再び情報収集→履歴書・職務経歴書作成→応募→書類選考・面接→内定・入社まずは以前見た情報や、書き留めたキーワードを再度眺めます。
前と違って見えているのではないでしょうか。
自己分析とキャリアプラン作成をした後に確認すると、情報収集時にあいまいになっていたことが以前より明確に分かるようになります。
また思い込みで自己分析等をしてしまうことがありますが、収集した情報を見返すことで誤りに気づくことがあります。
以前参照した情報を確認したら、次に転職サイトなどで求人票を再度見ていきます。
自分が何者か、どのようなキャリアを築いていきたいか、それらを明確にした後で参照すると、行きたい企業や求人票で注視するポイントが明らかになっていきます。
再情報収集で頭の整理がついたら、いよいよ履歴書と職務経歴書作成に移ります。