要件定義などの上流工程に携わるSEやITコンサルタント、その仕事のやりがいとは何でしょうか。
SIerや社内SE、ITコンサルタントを経験してきた身として、それぞれのやりがいを具体的にお伝えしていきます。
上流工程のSEのやりがい
上流工程をこなすSEは、プロジェクト成否を左右する重要な存在です。
業務知識がなく要件をきちんと詰められていなければ、設計・開発以降に仕様変更が多発し、品質や納期が守られなくなります。
プロジェクト管理に失敗し開発会社をコントロールできなければ、人不足、共通関数を使わず各自が勝手にプログラミング、などの弊害を招きます。
顧客折衝がうまくいかずユーザと険悪になれば、コミュニケーションが破綻し、値引き交渉等で不利になり、ユーザ受入テスト等のユーザ協力も得られなくなります。
業務知識や技術への理解、プロジェクト管理能力、コミュニケーション力など、オールマイティの力が求められる仕事です。
それだけにSEの活躍によりプロジェクト成功したときは、その達成感もひとしおです。
上流工程SEのやりがいは主に以下となります。
- プロジェクトを自身で動かしている実感がある
- ユーザの反応をダイレクトに感じられる
- 自分の考えで設計できる(人が決めた設計書に従う必要がない)
- 一般的にPGより給料が高い
以前、私は上流工程SEへの転職体験談を書きました。上流工程を目指す人にとって、SEのやりがいは魅力的であることが多いと思います。
言われたことをそのままコーディングではなく自分の考えをシステム設計に反映できる、要件をきちんと詰めて仕様変更が起きないようコントロールできる、ユーザの反応を直接受けることができる、いずれもやりがいに大きく繋がります。
ITコンサルタントのやりがい
ITコンサルタントはSEとは異なるやりがいを得られます。
企業のIT全体設計や業務プロセス設計、場合によっては企業の中長期のIT戦略立案まで携わることができ、SEよりもスケールの大きな仕事ができるのが魅力です。
SEの場合、関わるユーザは現場担当者やシステム部門担当者、関わる部署の管理職がほとんどです。ITコンサルタントの場合は、経営者や役員、部長レベルの人と主に関わります。企業にインパクトのある仕事をしている、との実感を持ちやすい職種です。
またSE以上に頭で考えることを求められ、自らの分析にもとづいた提案も行うため、組織ではなく個の力を重視したい人にもやりがいを感じられる仕事です。
ITコンサルタントのやりがいは主に以下となります。
- 企業全体のIT戦略・設計に携わっている実感がある
- 経営者や役員など企業トップと関わることができる
- 自らが分析し立案した戦略・課題解決策を提案できる
- SEよりかなり高給
ITコンサルタントへの転職と仕事のやりがいについては、以前書いたこちらも参考になると思います。
社内SEのやりがい
社内SEのやりがいは、企業の外ではなく、企業の中でシステム構築していけることにあります。
IT会社のSEやITコンサルタントの場合、どれだけ優れた提案をしたとしても、企業側のシステム部門などの判断で却下されればそれまでです。
しかし企業の社内SEの場合、自社の担当者として、最終的な意思決定に携わることができます。
また社内SEしかできない仕事としてベンダ・パッケージ選定なども挙げられ、会社に最適なシステムを自分たちで選んでいけるのです(実際には営業・人事など各部署の身勝手な要求に振り回されることも多いのですが・・・)。
特定の企業で働くため一つの会社・システムに長く携わることができ、システムが育っていく実感を持つこともできます。
新しいプロジェクトに次々参画し、一つのシステムに長く関わることができない、という悩みを持つエンジニアは多くいます。そのような人にとって、社内SEや、この後説明する自社開発エンジニアは天職となりうる可能性があります。
社内SEのやりがいは主に以下となります。
- 自らが企業のシステム構築の主体者として意思決定できる
- 一つのシステムに長く関わることもできる
- IT業界のSEと同等の給料をもらいながら、深夜・休日出勤が少ない
自社開発エンジニアのやりがい
自社開発エンジニアとは、自社製品のパッケージソフトウェアを設計・開発するエンジニアを指します。
自社開発エンジニアの魅力は、自分たちが理想とするソフトウェアを作り上げていくことができ、ユーザのフィードバックを受けながら育てていけることです。
上流工程SEやITコンサルタントは社外のユーザ、社内SEは他部署のユーザの要求に翻弄されます。自社開発エンジニアは、エンドユーザの意見も聞きながら、よりよいシステムを一番作りやすい環境にいます(もちろん売上が上がらなければソフトウェアが存続できないため、ユーザのわがままを機能に反映するなど苦労もあります)。
また自社開発の場合、世の中にない新しいソフトウェア開発に携わる機会もあります。ベンチャー企業のWebサービス系であれば、他では得られないやりがいを感じることも可能です。
立場によりますが、自社開発エンジニアはソフトウェアの機能定義から始まり、設計・開発・テストまで一貫して対応することが多くなります。その点も、上流工程も担当したいがプログラミングも続けたいエンジニアにとって魅力となります。
ただし自社開発エンジニアは、SIerやITコンサルティング会社、事業会社の社内SEなどに転職しにくいリスクはあります。ユーザの予算・スケジュール・要求の制約の中で成果を挙げるSEたちと、理想とするソフトウェアをある程度自由に開発していける自社開発エンジニアでは、求められる経験が異なるためです。
その後のキャリアへの影響は気になるところですが、若いうちだからこそ挑戦できる環境で、ベンチャー企業では自社開発ソフトウェアが大ヒットすれば株式上場・一攫千金も夢ではありません。私の知り合いで、20代の頃に数億円を手にし、今は海外でバカンス生活している人もいます(ただしその裏で夢敗れる人も多い)。
自社開発エンジニアのやりがいは主に以下となります。
- 理想とするソフトウェアを作っていくことができる
- ユーザの予算・スケジュール・要求などの制約が少ない
- 上流工程もしながらプログラミングも続けることができる
- 給料は低めだが、ベンチャーであればソフトウェアの大ヒット・上場等により一攫千金の夢がある
上流工程のやりがい
SE、ITコンサルタント、社内SE、自社開発エンジニア、これらの上流工程に共通するやりがいは、自身の判断・決定によりシステム導入を進められるということです。
PGや、詳細設計以降しか担当できない下請け会社SEでは、自身の判断が正しかったとしても、システム導入の意思決定は元請け会社や上流工程SEなどに委ねられます。
自分の思い通りにならないというのは、エンジニアにとって辛いものです。私も下請け会社PGの頃、歯がゆい思いをたくさんしてきました。
これから上流工程を目指す人は、転職などにより自分の能力・考えを発揮していくことができます。一人でも多くの人が上流工程を目指し、システム導入がより良くなることを願っています。