社内SEに必要な知識、知っていますか?
実際に社内SEとして働いた経験を踏まえ、具体的な事例を挙げながら話していきます。
そして、これから社内SEを目指す人向けに、スキル習得して年収を上げる方法もお伝えします。
目次
社内SEに必要な知識
社内SEに必要な知識は、大きく分けて業務知識とIT知識に分かれます。
実際に働いて、特に重要だった知識に限定して記載していきます。
[業務知識]
- 会計
- 法務(契約)
[IT知識]
- プロジェクトマネジメント
- ネットワーク
会計知識
会計は、社内SEの業務知識として間違いなく最重要です。
基礎スキルとして重要という意味もありますが、年収アップをするのに最適なのが会計の知識だからです。
※会計は、経理や簿記など、人により呼び方は様々です。
会計が基礎スキルかつ年収アップにつながるのはなぜでしょうか。
全ての企業の必須業務
会計を単純に説明すると、「お金の入金・出金」や「売上」などを記録し、会社の業績を表す「決算書」を作成するまで行う業務です。
お金の入金・出金などが発生しない会社は存在しません。
決算書が作成できなければ、会社の売上や利益(損失)が分からず、会社の今後の計画を立てることもできません。
そして売上等も含めて記録しないと、全ての会社の義務である税金が納められません。
つまり、全ての企業の必須業務が会計です。
例えば「物流」業務は商品発送がない会社には不要、「EC通販」業務はWebサイトを持っていない・通販をしていない企業には不要となります。
しかし会計はあらゆる会社が実施するため、会計知識は幅広い業種で求められます。
全てのシステムは会計に通ず
私は「販売システム」や「EC通販」を専門にしているから会計知識は不要、と思う人がいるかもしれません。
しかし、その場合も社内SEには会計知識が必要となります。
例えば販売システムで受注・売上処理をした後、売上金額を会計(経理)に伝える必要があるのです。
売上金額を経理部に紙で渡す、もしくは「自動仕訳」というデータ連携の仕組みで、会計が処理可能なデータ形式(仕訳形式)を作成する時など、会計知識を知らないとシステムをうまく作れません。
EC通販も同じです。注文や返品があったという履歴データを残し、さきほどの「自動仕訳」などの方法でデータ連携をします。
このとき「仕訳」という会計独特の考え(データ形式)を知らないと、システム設計が出来ません。
つまりどのような業務を担当していても、社内SEは会計知識が必要なのです。
※「仕訳」というのは、「現金 1000 / 売上 1000」などの形式を指します。"1000円を売り上げて入金された"ことを前述のように表現しますが、慣れるまでは違和感を感じると思います。
年収アップに最適
会計知識は年収アップに最適です。
全ての企業で求められる基礎知識だからというのもあります。
しかし一番の理由は、年収アップにふさわしい知識を得ていると「客観的に」証明しやすいからです。
例えば物流知識やEC通販知識、あなたが誰よりも深く知識を持っていたとしても、それを「客観的に」証明するのは難しいのが現実です。
誰もが知る有名企業で働いている、該当業務の経験年数が長いなどで「おそらく」知識を持っている、と判断はできます。
しかし「おそらく」なのです。
EC通販なども資格が各種ありますが、誰もが認める、誰もが客観的に知識があると認める資格は存在しません。
一方、会計は資格で「客観的に」知識レベルを証明することができます。
簿記2級、公認会計士、などの資格の名前は聞いたことがあると思います。
これらの資格は、どの企業でも「客観的に」会計知識が一定以上ある、と判断します。
なぜかというと、これらの資格に歴史があり、簿記2級であれば○○の知識はある、といった判断材料が企業内に揃っているからというのもあります。
もう一つは、会計が、「法律で決まったルール」を知っているか知らないかが重要となるからです。
決算書作成も、税金を納めるルールに関わる税務なども、ルールを知らなければ何もできません。
会計知識がある→ルールが分かる→決算書作成などもある程度できる→一定の能力ありとみなす→年収アップ、という方程式が成り立つ業務なのです。
これらの結果、例えば簿記2級なら年収30万円アップ、簿記1級なら年収100万円アップ、公認会計士なら年収300万円アップなど、年収の価値がある程度決められます。
経営企画やM&A(企業買収)にも携われる
社内SEは経理担当者ではありません。しかし会計知識があると、昇進や年収アップにつながりやすいのは事実です。
会計は全てのシステムの基礎スキルとなるため、知っていると様々なプロジェクトに参画しやすくなります。
そしてプロジェクト内でも、「システムと会計に詳しい」と上層部に頼りにされることが多くなります。
マネージャー・部長などは、経営陣から、業務効率化と利益(売上)増加の両方を求められる辛い立場にいます。
システムに詳しいだけでは業務効率化でしか貢献できません。
しかし会計も分かれば、利益を増やすために売上増・コスト削減をどのように進めればいいか、についても提案していくことが可能となります。
その結果、部長や上層部から評価され、社内SEとしてだけでなく、経営企画部への異動や、M&A(企業買収)などの会社の中核業務に携わることも現実的になっていきます。
実際、私も会計知識を深めて、社内SEとして経験を積んだ後、経営企画部に異動しました。
経営企画やM&A(企業買収)は深い会計知識が必要です。
数百億円のお金が動くような業務に携われたのは会計知識があればこそでした。
私の転職と社内SEの体験談は以下になります。興味があればこちらも見てみてください。
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法務(契約)
法務(契約)知識は、主に契約書に関する業務知識となります。
ここでいう契約書とは、例えば「開発基本契約書」「秘密保持契約書」など、外注先や下請け会社、ベンダ(システムを導入する会社)と結ぶ書類を指します。
法務知識が重要な理由
なぜ法務?と思ったかもしれませんが、社内SEには欠かせない大切な知識です。
社内SEが所属する事業会社(IT業界以外の小売・製造業などの会社)では、システム開発を外部のシステム会社に依頼することが多く、外部会社の管理コントロールが重要となります。
進捗管理などは後述のプロジェクトマネジメントの領域となりますが、忘れてはいけないのが契約です。
外部システム会社と関わる際には契約を必ず交わします。
このときの契約文言は、その後の関係に大きな影響を与えます。
トラブルになった際の法的根拠だけでなく、契約金額・納品日・瑕疵担保期間(無償でバグ修正する期間)などは契約書にのっとって処理されます。
契約書をおろそかにしてトラブルをうまく処理できなかったことで、地方に飛ばされた同僚の社内SEがいました。
法務知識がないと数千万円の損害を会社に与えることもあるのです。
法務知識は事前の勉強が必要?
法務知識ですが、社内SEになってから身につければ問題ありません。
契約書はだいたいフォーマットが決まっており、いくつか契約書作成の実務を行えば、ITで必要とされる法務知識は身につくからです。
むしろ法律の条文を丸暗記しても、社内SEが関わる契約ではあまり役に立ちません。
システム開発ならではの契約文言などもあり、実践で学ぶほうが間違いがありません。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理)は、社内SEの仕事の大部分を占める業務です。
IT知識・スキルとして必ず押さえる必要があります。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントとは、スケジュールや納期等の進捗の管理、課題一覧表などをもとに課題と対策・対応の管理などを指します。
プロジェクトの品質・納期・コストを管理し、システム導入を成功に導くための知識・スキルとなります。
PMBOK(ピンボック)と呼ばれるプロジェクト管理体系が有名ですが、知識だけ身につけてもあまり役立たないのがプロジェクトマネジメントです。
例えば、PMBOKで説明されている管理の例は以下となります。
- 進捗(スケジュールや納期)管理
- コスト(工数やお金)管理
- ステークホルダー(関係者)管理
知識としては「スケジュール表などで進捗を管理しましょう」などと書かれているのですが、具体的な内容には触れられていません。
そのため知識は知識として、社内SEになってから実践で身につけるほうが重要です。
年収アップ
業務知識の「会計」のように、ITスキルの「プロジェクトマネジメント」も年収アップしやすい領域です。
プロジェクトマネジメントの経験、とくにシステム規模の大きなプロジェクト管理経験があると、転職時に大幅に年収アップしやすくなります。
もし経験が少なくとも、「PMP」や「プロジェクトマネージャ試験」といった有名な資格を取得していれば、知識があるとして年収アップにつながりやすくなります。
プロジェクト管理は、知識より経験が重視されます。しかし知識を得ておくことで、経験が無い、もしくは少なくとも評価されることがあります。
プロジェクトマネジメントができる人材は、いつの時代も不足しています。
社内SEは特にプロジェクトマネジメントが苦手な人が多いため、知識を身につけ、経験しながら活かしていけば、人より一歩抜きん出た存在になれるのです。
ネットワーク
ネットワークは、社内SEの基礎知識として必要です。
例えば前職でプログラマーや、SIerのSEをしていた人の場合、ネットワークは別担当者が専門で行っていたため、自分は何も知らないことがあります(私がそうでした)。
しかし社内SEになると、ほとんどの場面で、ネットワークの基本的な知識が求められます。
パソコンの手配、ネットワーク不良になったとのユーザ問合せ、システム導入時のネットワーク設計など、社内SEとネットワークは切っても切り離せません。
私も社内SEになった頃、ネットワークの基礎知識がなく苦労しました。
難しいネットワーク知識は不要ですが、ネットワーク入門の本を買って、単語の理解と、ネットワークやセキュリティの基本的な考え方を覚えました。
ネットワーク知識は、ネットワークエンジニア専門にならない限り、身につけても年収アップにつながりにくい要素です。
しかし社内SEには必須の基礎知識です。
ネットワークも社内SEになってから覚えれば問題ありません(私がそうでした)。
実際にITスキル習得して年収を上げる
実際にITスキル習得して年収を上げるには・・・私や周りの事例をお伝えしながら、具体的にどのようにしていけばいいか説明します。
私の実際の例
会計に特化して評価が急上昇
私は「会計」の知識とスキルを伸ばしていきました。
前述のとおり会計は知識(資格)が年収アップに直結しやすく、転職時にも高く評価されます。
例えば物流に詳しいSEがいても、「システムと物流の両方が分かってすごい」とは言われません。
しかし会計に詳しいSEがいると、「システムと会計の両方が分かってすごい」と多くの人に言われます。
システムエンジニアが会計も分かることは、なぜか高く評価されるのです。
会計の場合、「仕訳」などの独特なルールを覚える必要があり、敷居が高い=難易度が高い、と思う人が多くいるからかもしれません。
日商簿記の資格
私の場合、まず日商簿記2級の勉強を3ヶ月して、資格取得しました。
これだけで「システムと会計の両方が分かってすごい」という人が出てきました。
そして、半年間頑張って日商簿記1級を取ったところ、評価が急上昇しました。
これは当時いた会社でも、転職活動したときも同じで、「日商簿記1級を取っているなら会計は問題ないですね」と話す人もいました。
ちなみに、日商簿記1級の取得前に転職活動したときと、1級取得後に活動したときは提示される年収が100万円ほど変わりました。
転職エージェントの担当者から、新たな求人として紹介・推薦された企業のレベルも、中堅企業中心から大手・大企業にアップしていました。
日商簿記1級は合格率10%前後の資格で、一般的に難関と言われます。
当時、仕事も毎日深夜と遅く大変でしたが、半年間であればモチベーションも保つことができました。
なにより、半年の苦労で、高い評価と、具体的な成果(年収の大幅アップ)を得ることが出来たのです。
その後、会計知識(資格)が高く評価されることに気付いた私は、少し変わった会計資格も取得しました。
その資格も評価が高く、私の転職・年収のさらに大幅アップにつながりましたが、話が長くなりますので別の所でお話するようにします。
周りの事例
IT知識習得に精を出しても評価されずらい
私の周りでは、「Oracleデータベース」「Java」などIT知識習得に精を出す人が多くいました。
エンジニアの評価上昇や年収アップにはIT知識も重要です。
しかし社内SEなどの上流工程に携わるには、それらのIT知識はあまり役立たないことが多いのです。
理由は、社内SEが設計・プログラミングすることは少なく、外部システム会社に委託してしまうから。
そのためORACLE Master Goldなどの難しい資格を取っていても、評価も低く、年収アップにもつながらない人がいます。
プロジェクトマネジメントに特化して成功した同僚
そんな中、「プロジェクトマネジメント」知識習得に的を絞った同僚がいました。
彼はプロジェクト管理経験はあまりありませんでしたが、PMPなどのプロジェクト管理資格を勉強・取得し、社内SEに転職しました。
社内SEはプロジェクトマネジメントが苦手な人が多いです。そんな中、彼のプロジェクト管理知識は目立ちました。
経験は不足していましたが、勉強熱心でプロジェクトマネジメント習得に向いていると判断され、彼は社内の各種プロジェクトにどんどん抜擢されていきました。
結果、数々のシステム導入の経験を積み、プロジェクトマネージャーとして大手SIerに年収1120万円で再転職したのです。
実際に役立つ知識
社内SEに必要な知識は多岐にわたります。
しかし忘れてはいけないのは、本当に身につけるべき知識は限られるということです。
多くのエンジニアがする失敗は、データベース、プログラム言語などの知識習得に力を注いでしまうことです。
プログラマーや、技術中心のSEを目指す場合はそれでも役立ちます。
しかし社内SEは「会計」や「プロジェクトマネジメント」など、本当に求められる普遍的な知識に絞って、身につけることをおすすめします。
社内SEに求められる上流工程スキル
社内SEに必要な知識をお話しましたが、知識ではなく、必要な「経験・スキル」が何か、気になったかもしれません。
例えば「コミュニケーション力」など、社内SEに必須のスキルは知識では身につきません。
社内SEなどの上流工程SEに必要なスキルと、具体的な事例を以下にまとめていますので参考にしてみてください。
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